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コロコロするのは間違い?ストレッチポールの効果的な使い方を解説します!

ブログをご覧くださり、ありがとうございます。

パーソナルジムDr. KOMEDA Relaxation & Fitnessのアスレティックトレーナー、坂内です。

 

最近はストレッチポール(「フォームローラー」とも呼びますね)

がとてもポピュラーになってきたように思います。

どのジムにも大抵はありますし、振動するものやでこぼこしたものなど

様々な種類のものが売り出されています。

 

 

パーソナルジムDr. KOMEDA Relaxation & Fitnessでももちろんストレッチポールを置いていて、

ウォームアップからエクササイズにまで、活躍しています。

 

そんな中、先日お客様からふと言われたのが

「ストレッチポールってコロコロしなくても良いんですね」

という言葉でした。

私のセッションでは、コロコロすることはまず無いからです。

 

 

巷では上のようにストレッチポールで

硬い箇所をコロコロ(もしくはゴリゴリ)するのが一般的となっています。

私もかつてはそうしていました。

 

ですが、これは果たして本当に効果的なのでしょうか?

毎回痛い思いをして頑張っているのに、

大して変化がないという方も多いのではないでしょうか?

 

このブログでは

・研究からみるストレッチポールの効果

・ストレッチポールが組織に実際に与えている影響

・ストレッチポールが変化を与えているもの

・ストレッチポールの効果的な使い方

を解説していきます。

 

研究からみるストレッチポールの効果

 

ストレッチポールが及ぼす効果については、

多くの研究が発表されています。

複数の臨床研究を取りまとめ、分析した

システマティックレビューでは、

ストレッチポールを行うことによって

長座体前屈や股関節、膝関節、足首の

関節可動域が改善した(=その周囲の筋肉の動きが良くなった)

と報告されています。

 

 

一方で、別の研究では

ストレッチポールによる介入によって

足首の可動域が改善されたものの、

筋肉の形状…つまり筋繊維を束ねている筋束の長さなどに

変化は見られなかったという報告がされています。

 

ストレッチポールで関節の可動域の改善はされるけど、

筋肉そのものの形状に変化は起こっていない…

それではストレッチポールというのは

一体何に対してアプローチしているのでしょうか?

 

ストレッチポールが組織に実際に与えている影響

 

世間で言われている、いわゆる「筋膜リリース」は

ストレッチポールでコロコロして筋膜をべりべりと

剥がすイメージがあると思います。

 

 

しかし、残念ながらコロコロしたくらいでは

「筋膜」は変化しませんし、そもそも

剥がれることもありません!

 

「筋膜リリース」などで用いられる日本語の

筋膜」は英語の「Fascia(ファシア、ファッシアともいいます)」

を訳したものですが、正確な概念は少々違うものです。

日本で認識されている「筋膜」は、正確には

筋筋膜」=「Myofascia(マイオファシア)」

といって、筋肉を包んでいる膜のような組織を指します。

実際のFasciaは、Myofasciaを含む表皮や脂肪組織、

筋肉や靭帯、臓器などを貫通して

全身に繋がっている、網目状に存在している結合組織を指します。

 

生きた人間のFasciaは、下の写真のようになっています↓

 

全身を貫くこんな複雑な組織が、

ストレッチポールを数分コロコロしたくらいで

変化すると考えるのは難しいです。

 

ある研究モデルでは、

筋膜の形状に1%の変化をもたらすためには

大腿筋膜張筋で約925kg, 足底筋膜で約852kg

もの圧を加える必要があるとも言われています。

 

昔お話させてもらった外科医の先生は、

「もし本当に筋膜を“剥がす”としたら、

メスを使わないと無理ですよ」

と苦笑いしながら話していました。

 

ストレッチポールが変化を与えているもの

 

ストレッチポールで筋筋膜は剥がれない、

筋肉の形状にも変化は起こっていない。

だけど関節の動きが良くなっているというのは

実証されている…

 

ストレッチポールが変化を与えているものとは、

一体何なのでしょうか?

 

それは、①Fasciaの滑走性と、

➁Fasciaに数多く分布している感覚センサーだと言われています。

 

Fascia、もとい結合組織の成分は、

部位によって配合の比率などの違いはありますが

コラーゲンなどの繊維を構成する成分や

組織の弾力を形成するエラスチン、

保水機能の高いヒアルロン酸などの成分で主に構成されています。

 

運動をしないことによる不活動、

反対に使いすぎ&適切なケアをしないことによる過活動、

怪我などによる炎症などで

これら結合組織の粘性が上がり、Fasciaの動きが悪くなります。

 

そうすると、コラーゲンなどの元となる

線維芽細胞

という細胞の活動も鈍くなってしまい、

新しい組織が生成される(=ターンオーバー)のも

遅くなっていきます。

 

これでは負の連鎖ですね。

 

ストレッチポールでは、まず

①圧を加えて一時的な虚血状態にし、

それを解放することで一気に血流が戻り

組織の循環を良くします。そうすることで

組織間の滑走性を上げる効果が期待できるといわれています。

滑走性が良くなると、線維芽細胞の活動もアップするので

コラーゲンなど結合組織の合成も進んでいきます。

 

そして

➁ストレッチポールによる圧やストレッチの刺激が

Fasciaに多く散りばめられている感覚センサーに働きかけ、

体の感覚に変化を起こし、主観的なスッキリ感、

そして筋肉などの過剰な緊張を

緩和してくれる可能性があると言われています。

 

ストレッチポールの効果的な使い方

 

Fasciaに数多く分布している感覚センサーは

様々な刺激に反応しますが、

ストレッチポールを使用した際にとりわけ反応するのが

ルフィニ小体

パチニ小体

といわれています。

 

 

ルフィニ小体は主に組織が延ばされる感覚(ストレッチ)

に反応し、パチニ小体はあらゆる圧や振動に対して

応答を示します。

 

これらのセンサーはわずかなストレッチや

圧の刺激に反応します。

また、Fasciaを物理的に変化させようと思ったら、

とんでもない力が必要であることもお話しました。

 

以上のことを踏まえると、

ストレッチポールでコロコロ、グリグリすることは

必ずしも必要ではないということになります。

 

むしろ、痛みを我慢することで

かえって身体が防御反応をしめして

余計に組織が緊張してしまう可能性もあります。

 

私がおすすめしているのは、

気になる箇所をストレッチポールに乗せ、

ゆっくりと圧(=体重)をかけながら

じーっとしてしばらく刺激を加えてあげることです。

 

研究では持続的な圧を2分以上はかけないと

効果がないという報告もされていますが、

経験からいうと時間に関しては個人差が大きいです。

 

30秒ほど圧をかけてあげて「緩んできた」

と感じる方もいれば、

1-2分はやらないとスッキリしないという方もいます。

 

自分の身体の感覚に耳を傾けながら、

心地よい~痛気持ちいいくらいの圧で

感覚が変化していくのを感じるのが良いと思います。

 

まとめ:

・ストレッチポールでは筋膜を剥がしたり、

形状的な変化を加えることはほぼ不可能である

 

・ストレッチポールによる圧やストレッチによって、

組織の滑走性を上げることが出来、可動域の改善に

繋がっている可能性がある

 

・ストレッチポールによる圧やストレッチで

感覚センサーに変化を加え、主観的なスッキリ感や

筋緊張の緩和などが期待できる

 

・ストレッチポールでコロコロする必要は必ずしも無く、

持続的な圧をゆっくりとかけてあげることで

十分な効果がある

 

ぜひ、参考にしてみて下さい!

 

 

参照:
Cheatham SW, Kolber MJ, Cain M, and Lee M (2015). The Effects of Self-Myofascial Release
Using a Foam Roller or Roller Massager on Joint Range of Motion, Muscle Recovery, and
Performance; a Systematic Review. The International Journal of Physical Therapy. 10(6).

 

Couture G., Karlik D., Glass S. C. and Hatzel B.M. (2015). The Effect of Foam Rolling
Duration on Hamstring Range of Motion. The Open Orthopedics Journal. 9.

 

Grieve R. et al. (2022). The Effects of Foam Rolling on Ankle Dorsiflexion Range of Motion
in Healthy Adults: a Systematic Literature Review. Journal of Bodywork & Movement
Therapies. 30.

 

Ingraham P. (2021). Does Fascia Matter? A Detailed Critical Analysis of the Clinical
Relevance of Fascia Science and Fascia Properties. Retrieved from https://www.painscience.com/articles/does-fascia-matter.php#sec_tough

 

Schleip R. (2003). Fascial Plasticity – a New Neurobiological Explanation: Part 1. Journal of
Bodywork & Movement Therapies. 7.

 

Yoshimura et al. (2021). Effects of Self-Myofascial Release Using a Foam Roller on Range of
Motion and Morphological Changes in Muscle: A Crossover Study. Journal of Strength and
Conditioning Research. 35(9).