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健康寿命延伸のために!サルコペニアについて解説します

ブログをご覧いただきありがとうございます。

Dr.KOMEDA Relaxation  & Fitnessです。

 

日本人の平均寿命は年々伸びていて、

2019年には平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳。

更に2040年には男性83.27歳、女性89.63歳となって、

女性の平均寿命が90歳近くまで延伸すると予想されています。

 

厚生労働省より引用

どんどん長くなる高齢期を健やかに過ごすにあたって

理解が必要なのが「サルコペニア」です。

サルコペニアは予防が可能。

正しく理解して対策していきましょう!

 

サルコペニアとは

「サルコペニア」とはギリシャ語の「Sarx(筋肉)」「Penia(喪失)」が語源となっていて

加齢や病気によって筋肉量が減少し、それに伴って筋力や身体機能が低下する状態

のことです。筋力低下によって握力の低下・歩行速度の低下による運動量の低下・

そして転倒の要因にもなったりします。

2016年にはサルコペニアは国際疾病分類(ICD)から疾患として認定されました。

 

サルコペニアの可能性がある症状

サルコペニアは下腿周囲径や問診、握力などの筋機能や身体機能、

DXAやBIAという機器を用いた骨格筋量の測定をして判断されますが、

以下のようなことが思い当たると、サルコペニアの可能性があると言われています。

 

・つまづきやすくなった

・青信号の間に横断歩道を渡り切れない

・ペットボトルのキャップを開けにくい

・少しの活動、立っているだけでも疲れやすい

・立ったまま靴下を履くことができない

 

骨格筋肉量や握力などを自分で測ることは難しいですが、

上記のような症状があり、自分がサルコペニアかな?

と思った時に出来るセルフチェックがいくつかあります。

その中で一番簡単なのが「指輪っかテスト」です。

 

サルコペニアのセルフチェック

 

Tanakaら(2017)より引用

《指輪っかテスト》

1.椅子に座って両足を床につける

2.両手の親指と人差し指で輪っかを作る

3.非利き足のふくらはぎの一番太い部分を、輪っかで囲う

4.ふくらはぎの太さが輪っかよりも大きいか、ちょうどの太さか、輪っかよりも小さいかをチェックする

 

ふくらはぎの太さが輪っかよりも太い人がサルコペニアである可能性は低いと言われています。

そして、輪っかと同じくらいの太さの人は約2.1倍、輪っかに隙間が出来る人は約3.4倍、サルコペニアを発症する

リスクが高くなるということが研究で報告されています。

 

《椅子立ち上がりテスト》

1.両腕を胸の前で組んで、出来るだけ早く、椅子から立ち上がる動作を5回繰り返す

 

この立ち上がり動作に12秒以上かかってしまう場合、サルコペニアの可能性が高いと言われています。

※実施する場合は安定した椅子やソファで行い、転倒や尻もちに十分気を付けて下さい!

 

これらはあくまでセルフチェックですので、自分が本当にサルコペニアか?

当てはまるのか分からない場合は医療機関を受診するのが良いと思います。

 

サルコペニアの予防と介入

サルコペニアの大きな原因は加齢ですが、

その他に運動不足と栄養、特にタンパク質の不足が挙げられます。

 

加齢はどうすることも出来ませんが、

運動と栄養については介入が可能なもの。運動と栄養によって筋肉量そして筋力がアップするという報告がされています。

 

サルコペニアとタンパク質の摂取・運動の実施

プロテイン=タンパク質はアスリートや若い人が摂るものだと思っている方も多いですが、

実は高齢者こそ積極的に取り入れてほしいものです。

 

ある研究では高齢者(平均71歳)は、筋肉を合成するためには若い人(平均22歳)よりも約2倍のタンパク質が必要であると報告しているものもあります(高齢者:体重1kgに対して0.6gのタンパク質 vs. 若者:体重1kgに対して0.25gのタンパク質)。

 

この研究では筋力低下を予防し、身体機能を維持するためには、一日に体重1kgあたり約1.6-1.8gのタンパク質を摂取するのが理想であると結論を出しています。(例:体重50kgの人であれば一日80g-90gのタンパク質)

 

また、タンパク質の摂取と運動を組み合わせることが、

サルコペニアの予防と介入により効果的であると言われています。

 

別の研究ではフレイルと認定された高齢者を

①プロテインを飲むグループと②飲まないグループに分けて、それぞれダンベルなどの負荷を持って行うレジスタンストレーニングを2週間実施、筋肉量を測定しました。

結果、トレーニングのみを行ったグループは変化がほぼ無かったのに対して、プロテインを飲んでトレーニングしたグループの高齢者の方は、除脂肪体重が‘1.3㎏増加したそうです。

 

 

そして筋タンパクの合成は、レジスタンストレーニングと有酸素運動を組み合わせて実施した方が、

それぞれを単体で行うよりも効果的であるとされています。

 

まとめ

・サルコペニアは筋肉量の減少や筋力低下による症状がある

・サルコペニアの主な原因は加齢だが、運動不足や栄養不足も要因となっている

・サルコペニアは栄養と運動による適切な介入で予防、改善することができる

 

運動やプロテインは若い人だけの特権ではありません。

サルコペニアを予防し、身体的な自立を確立するためにも、高齢者こそ運動を日常生活の一部にしたいものです。

 

参照:

 

Aas S. N et al. (2020). Musculoskeletal Adaptations to Strength Training in Frail Elderly: a Matter of Quantity or Quality? Journal of Cachexia, Sarcopenia and Musle. 

 

Rogeri P.S et al. (2021). Strategies to Prevent Sarcopenia in the Aging Process: Role of Protein Intake and Exercise. Nutrients.

 

Tanaka T, Takahashi K, Akishita M, Tsuji T, and Iijima K. (2018).  “Yubi-wakka” (finger-ring) test: A practical self-screening method for sarcopenia, and a predictor of disability and mortality among Japanese community-dwelling older adults. Geriatrrics & Gerontology International.

 

荒井秀典(2020). サルコペニア診療ガイドライン. 日本内科学会雑誌 109巻10号

 

厚生労働省 平均寿命の推移