ブログ

痛み無く動かしたい!変形性膝関節症について解説します

ブログをご覧頂きありがとうございます。

Dr.KOMEDA Relaxation & Fitnessのアスレティックトレーナー、坂内です。

 

年齢を重ねてきて、椅子から立ち上がる時、階段の昇り降りする時など膝の曲げ伸ばしが必要な場面で「膝が痛い」と感じることがある人は、もしかしたら「変形性膝関節症(Osteoarthritis=OA)」の可能性があるかもしれません。

 

変形性膝関節症は、その名の通り膝関節が変形して痛みや運動機能障害などを引き起こす慢性的な疾患で、進行していくと痛みで歩くことが困難になったり、最悪の場合、人工関節置換術が適用されたりします。

 

痛みから身体活動量が減り、筋肉量も減少、それがサルコペニアのリスクを上昇させることへも繋がります。 (サルコペニアについてはこちらの記事をご覧ください)

 

一度変形してしまった骨などの構造を変えることは困難です。

しかし、トレーニングなどのアプローチで変形性膝関節症の症状を和らげたり、日常生活を快適に送れるように介入することは可能なのでしょうか?

 

このブログでは

変形性膝関節症について と 運動介入による効果

お話したいと思います。

 

変形性膝関節症についての基礎

 

変形性膝関節症(OA)とは、膝関節のクッションのような役割を果たす軟骨の質が低下し、

すり減ることで痛みなどの症状が出る状態のことです。

 

よく「軟骨がすり減ったから痛い」ということを耳にしますが、厳密にいうと、

軟骨には神経は通っていないので、痛みは感じません。

ですが、この軟骨がすり減ってその下の骨がむき出しになり、ぶつかると痛みが出ます。

 

近畿大学病院HPより引用

 

ただこれは変形性膝関節症の末期に起こることです。

初期の変形性膝関節症は実は痛みを伴わない場合も非常に多く、変形性膝関節症の人の40%以上は、痛みを感じたり、日常生活を送ることに困難することも無いという報告もあります。

 

 

あまり顕著な膝の変形や軟骨のすり減りもない初期の段階では、軟骨の摩耗によって

関節を覆っている関節包の内側に炎症が起こって痛みが発生したり、炎症を繰り返すと発痛物質が分泌されるので痛みが発生したり、痛みの閾値が下がることで痛みに敏感になります。

 

 

また、炎症の繰り返し=組織の損傷と再生が繰り返されることで関節包の繊維化が進み、硬く分厚くなることで動かしにくさや可動域の制限にもつながってきます。

 

 

変形性膝関節症の治療は、痛み止めの内服薬や外用薬の使用、膝関節へのヒアルロン酸注射、そして運動介入があります。これらの保存療法でも症状が改善されない場合に、手術というオプションも考慮することになります。

 

変形性膝関節症への運動介入による効果

変形性膝関節症に対する運動介入の基本的な考え方は、

・関節可動域制限の改善

・膝関節周囲の筋肉の強化・活性化

です。

 

関節可動域制限の改善

変形性膝関節症の方に多いのが、膝の伸展制限です。

膝の内側にある内側側副靭帯(MCL)は膝の伸展でピンっと張り、膝関節を安定させる役割があります。

 

このMCLは膝関節が曲がった状態では緩むので、膝の伸展制限がある状態で歩いたりするとMCLが緩んだまま=膝の内側が不安定なまま接地することになり、膝への負担が更に増えてしまうことになります。

 

日常生活動作にも制約が出てくるので、膝関節の可動域制限の改善はマストです。

 

 

膝関節周囲の筋肉の強化・活性化

膝関節の周りの筋肉を強化することの有効性は様々な研究で明らかになっています。

1428人の変形性膝関節症の患者を対象に、運動療法の効果を検証した過去12の研究をまとめたレポートでは、

うち11の研究で筋力トレーニングを行うことで痛みの軽減や日常生活の質の改善が見られたという報告がされました。

 

2018年の研究では膝の伸展筋(大腿四頭筋)…前ももの筋力を強化することで、変形性膝関節症患者の膝の痛みが38%改善され、更に、痛みによって抑制されていた身体機能の改善もみられたそうです。

 

また、別の研究では、前ももに加えてお尻、体幹といった大きな筋肉をまんべんなく強化するのがより効果的であるとしています。この研究では大腿四頭筋・殿筋・体幹の筋力トレーニングを12週間行った変形性膝関節症患者の膝の痛みが約63%軽減され、日常生活の質の改善、歩行スピードの向上が見られました。

 

筋力トレーニングというと長時間、いくつものエクササイズをしなければいけないと気負われるかもしれませんが、必ずしもその必要はありません。

 

Torstensenら(2023)は、189人の変形性膝関節症患者をトレーニング高容量グループと低用量グループの2つに分け、高容量グループは11種類のエクササイズを70-90分、低用量グループは5種のエクササイズを20-30分、それぞれ週3回、12週間行いました。

 

結果は、高容量グループと低用量グループで膝の痛みの改善と日常生活の動作の改善にグループ間で大きな差は無かったそうです。唯一、スポーツやレクリエーションのパフォーマンスの改善に関しては高容量グループの方が優位に改善が見られたそうですが、適切に行えば、短時間の運動でも十分な効果が見込める可能性があることが分かりました。

 

具体的にはどんな運動を行ったらよいのでしょうか?

以下は、日本整形外科学会が作成した変形性膝関節症に対するホームエクササイズです。

是非、参考にしてみてください。

 

日本整形外科学会より引用

 

まとめ

変形性膝関節症に対する筋力トレーニングは、痛みや生活の質の改善に有効であることが証明されています。

 

別の研究(2018)では膝の痛みがあると前ももの筋肉の収縮力が低下するという報告もありますので、物理療法や薬、注射などで痛みのコントロールを並行して行いながら、運動によって筋力をアップさせていく、というのが望ましいかもしれません。

 

インターネットで検索すると上記のような変形性膝関節症のための様々なエクササイズが紹介されていますが、

膝の変形の度合い・痛みの程度・可動域などによってその人にとって今は避けるべき動きなども出てきます。

まずは医療機関で適切な診断を受け、最適な治療方針を仰ぎましょう。

 

 

参照:

 

Aguiar G C. (2016). Effects Resistance Training in Individuals with Knee Osteoarthritis. Fisioterapia em Movimento. 29(3).

 

Kim D. et al. (2018). The Effects of Pain on Quadriceps Strength, Joint Proprioception and Dynamic Balance Among Women Aged 65 to 75 Years with Knee Osteoarthritis. BMC Geriatrics. 18.

 

Hall M. et al. (2018). Knee Extensor Strength Gains Mediate Symptom Improvement in Knee Osteoarthritis: Secondary Snalysis of a Randomised Controlled Trial. Osteoarthritis and Cartilage. 

 

Torstensen T.A. et al. (2023). High- versus Low- Dose Exercise Therapy for Knee Osteoarthritis. A Randomised Controlled Multisenter Trial. Annals of Internal Medicine. 

 

Turner M. et al. (2020). The Role of Resistance Training Dosing on Pain and Physical Function in Individuals with Knee Osteoarthritis: A Systematic Review. Sports Health. 

 

日本整形外科学会(2010). 変形性ひざ関節症の運動療法.